「まだ少し水が滲んでいるだけだから大丈夫」という言葉を、私はこれまでの職人人生の中で何度耳にしてきたことでしょう。しかし、その甘い判断が後にどれほど大きな代償を払うことになるかを、私は現場で何度も見てきました。漏水とは、一度始まれば自然に止まることはまずありません。むしろ、水が流れることで配管の亀裂は徐々に広がり、被害は刻一刻と拡大していくのです。私が関わった現場の中には、トイレのわずかなチョロチョロという音を一ヶ月間放置した結果、翌月の水道代が十万円を超えてしまったという高齢者世帯もありました。また、壁の中の漏水に気づかず、ある日突然、部屋中の壁紙が黒カビで埋め尽くされ、リフォームに数百万円を投じることになった家族もいます。漏水とは、ただの水漏れだと思って侮ってはいけません。それは住まいの根幹を揺るがす重大な事態なのです。特に恐ろしいのは、電気系統への影響です。漏れた水が電気の配線やコンセントに達すれば、漏電火災を引き起こす危険性があります。水が火事の原因になるというのは皮肉な話ですが、これは実際に起こり得る現実です。プロの立場から強くアドバイスしたいのは、少しでも違和感を覚えたら、迷わず専門家に相談してほしいということです。「こんな小さなことで呼ぶのは申し訳ない」と思う必要はありません。その小さな気づきが、結果として家を救い、資産価値を守ることになるのです。最近はインターネットで検索すれば、自分で修理する方法を解説する動画もたくさん出てきます。確かにパッキンの交換程度であればDIYで可能ですが、原因がはっきりしないまま見よう見まねで分解してしまい、かえって状況を悪化させてしまうケースも少なくありません。漏水とは、プロの診断があって初めて本当の解決策が見えてくるものです。私たちは、水の音の変化、壁の温度、メーターの微妙な動きなど、多角的な視点から問題にアプローチします。早期発見、早期治療。これは医療の世界だけでなく、建物のメンテナンスにおいても共通する黄金律です。皆さんの家が、そして大切な家族が、水のトラブルに脅かされることなく過ごせるよう、日頃からのチェックを怠らないでください。水は優しくもあり、恐ろしくもある存在だということを、常に心の片隅に留めておいてほしいのです。
水道のプロが語る漏水を放置することの恐ろしさと対策