この仕事を始めた頃、師匠から言われた言葉を今でも鮮明に覚えています。「お前の仕事の値段は、お客様が次もまた呼んでくれるかどうかで決まる」という言葉です。水道修理の業界には、決まった定価というものが存在しません。それぞれの業者が独自に作成した料金表に基づいて運営されていますが、そこにはその業者の「哲学」が反映されています。私が作成している料金表の基準は、常に「持続可能な透明性」にあります。極端に安い基本料金を設定して、現場で強引にオプションを積み上げるような商売は、一時は儲かっても信頼を失います。逆に、あまりに高い料金を設定すれば、お客様の生活を圧迫してしまいます。適正な料金表とは、スタッフが誠実に働き、最新の機材を維持し、万が一の際の損害賠償保険にも加入できるだけの健全な利益を含んだものであるべきです。例えば、私の料金表では「出張基本料金」をあえて明示しています。これは、現場に行き、専門家としての知見で診断を下すことに対する正当な対価です。もし、診断だけで修理に至らなかった場合でも、この基本料金をいただくことで、私たちは無理に不要な工事を勧める必要がなくなります。また、部品代についても、市場価格に準じた適切なマークアップに留めるよう徹底しています。最近はインターネットで誰でも部品の価格を調べられる時代ですから、不当な上乗せはすぐに見破られます。私たちが守るべき適正な料金表の基準は、お客様が数年後にまた別の場所でトラブルが起きた時、「あの人に頼めば安心だ」と思い出していただけるラインにあります。地域に根ざして商売を続ける以上、悪い評判は一瞬で広まります。だからこそ、私たちは料金表という約束事を神聖なものとして扱い、現場でのズレを最小限に抑える努力を続けています。お客様から「他より少し高かったけど、丁寧な説明で納得できたよ」と言っていただけることが、私にとって最大の報酬です。料金表とは単なる数字の羅列ではなく、職人の誠実さとプライドが込められた誓約書なのです。その本質を理解してくれるお客様との出会いが、この厳しい業界で仕事を続ける大きな支えとなっています。