それは肌寒くなってきた秋の夜のことでした。いつものようにキッチンでお湯を使い、蛇口のレバーをパッと閉めた瞬間、「ドン!」と、家の壁のどこかを鈍器で殴ったような、今まで聞いたことのない大きな音が響き渡りました。心臓が跳ね上がり、一瞬何が起きたのか分かりませんでした。泥棒でも入ったのかと家中を確認しましたが、異常はありません。しかし、その後もお湯を使うたびに、蛇口を閉めるタイミングで「ドンドン!」と衝撃音が鳴り響くのです。音の出どころは、どうやら屋外に設置された給湯器のあたりからのようでした。不安になった私は、すぐにスマートフォンで「給湯器 音 ドンドン」と検索。すると、それは「ウォーターハンマー現象」というもので、放置すると水漏れなどに繋がる危険性があることを知りました。自分で止水栓を少し絞ってみましたが、音は小さくなるものの完全には消えません。これは素人が手を出せる問題ではないと判断し、翌朝、地元のガス会社に連絡しました。来てくれた作業員の方は、音を聞くなり「ああ、典型的なウォーターハンマーですね」と一言。原因は、我が家の水道圧が比較的高いことと、給湯器の経年劣化で衝撃を吸収しきれなくなっていることだろうと診断されました。対策として提案されたのは、給湯器の手前の配管に「水撃防止器」という小さな装置を取り付けること。工事は一時間ほどで終わり、費用は二万円弱でした。工事後、恐る恐るお湯を使い、蛇口を閉めてみましたが、あれほど悩まされた衝撃音は嘘のようにピタリと止んでいました。あの不気味な音から解放された安堵感は、今でも忘れられません。この経験から、給湯器の異変は放置せず、すぐに専門家に相談することの重要性を痛感しました。